社会政策
Online ISSN : 2433-2984
Print ISSN : 1883-1850
日本的雇用関係と「ブラック企業」(小特集趣旨,<小特集>若者「使い捨て」企業問題にどう取り組むか-社会的ネットワークの可能性)
田中 洋子
著者情報
ジャーナル フリー

2015 年 6 巻 3 号 p. 57-67

詳細
抄録

若年労働力の酷使は,歴史的に繰り返し見られた現象であるが,2000年代後半以降の日本で広がっている,若者を使いつぶし,使い捨てるような,いわゆる「ブラック企業」問題は,その背景として新しい歴史的特質を持っていると考えられる。長時間労働など全人的な会社への貢献を,長期的生活保障の見返りとして受容することで形成されてきた戦後の日本的雇用関係は,個人や家族生活の重視のために長労働時間を根本的に見直す機会を逸する中,新自由主義と規制緩和のもとで,長期的生活保障部分が弱化する一方,長時間労働や業績への貢献は容赦なく強化されるという「ブラック」度を上昇させた。本稿では特に「ブラック企業」が飲食業・小売業などの対人サービス業で多く見られることに注目し,日本的雇用関係の中心になってきた製造業とサービス産業の技能形成・人材育成制度の相違について考察する。20代前後の若者の4〜7割の入職先が飲食業・小売業であることを確認した上で,製造業で求められてきた長期的な技能形成が,サービス産業では(1)入職後すぐにスタッフ・店長として働く速成労働力に変化したこと,それに伴い,(2)技能の管理よりも,やりがいや夢の実現を通じた業績向上という動機づけ管理へと変化したことを論じる。最後に,こうした産業で若者を使いつぶさせないためには,幅広い社会的ネットワークの形成を通じて,技能形成や動機づけの有無と切り離した形での基礎的な労働条件の法的・社会的規制が必要であると論じる。

著者関連情報
© 2015 社会政策学会
前の記事 次の記事
feedback
Top