社会政策
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日本における雇用政策・労使関係の現状と課題 : ヨーロッパにおけるフレクシキュリティ政策を念頭に(<特集>社会政策としての労働規制)
戸室 健作
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2015 年 7 巻 1 号 p. 65-75

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抄録

本稿の課題は,日本における雇用政策・労使関係の現状と課題について,ヨーロッパにおけるフレクシキュリティ政策との比較を念頭に検討することである。現在,安倍政権が「失業なき労働移動」という合い言葉の下に推進している雇用政策は,労働者の安定性(security)に対する施策を欠落させた一方で,従来以上に日本の労働市場を流動化させようとしている。ヨーロッパにおいてフレクシキュリティが現実的な政策課題として議論される前提には,産業別労働組合による強力な労働市場規制の存在がある。ヨーロッパでは産業別労働組合が締結した労働協約によって職種・技能ランク別に賃金の最低基準が設定されており,横断的労働市場が整備されている。しかし日本では,近年,個人加盟ユニオンの取り組みといった新しい動きが見られるとはいえ,総じて労働組合による労働市場規制は脆弱であり,もし雇用柔軟化政策が推進されれば労働市場は底が抜けるであろう。

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© 2015 社会政策学会
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