社会政策
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介護報酬複雑化の過程と問題点
三原 岳郡司 篤晃
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2015 年 7 巻 1 号 p. 175-187

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抄録

介護保険制度ではサービスを提供した対価として事業者に報酬が支払われており,その体系は改定の度に複雑化している。サービスの種類と単価を示す項目は制度創設時に1760項目だったのに対し,2012年度には2万929項目まで膨らんでいる。項目別支払い制度の下では業界団体をはじめ,多方面から経済的な評価を求める声が強く存在しており,このコンフリクトの解決を図ろうとする厚生労働省が報酬改定の度に新たなルールを追加することで,項目が増えているのである。「コンフリクト・モデル」によると,ケアのような問題が尽きない領域では複雑化の進行は避けられない。しかし,国民には制度の全体像がますます分かりにくくなり,議論への参加を妨げる結果となっている。ケアは国民にとって最も身近な領域であるにもかかわらず,複雑な仕組みが国民的な議論を阻害し,民主主義が機能しにくい環境を生み出している。

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© 2015 社会政策学会
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