社会政策
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工程設計力が技能形成と雇用管理に与える影響 : 大型洗濯機工場の事例研究
梅崎 修南雲 智映
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2015 年 7 巻 2 号 p. 119-131

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抄録

本稿は,機械産業の生産現場を取り上げ,「工程設計力」に焦点を当てて職場別の技能形成を分析した。まず,標準的な生産技能者は,約10年の勤続を経て複数の機械を使いこなせるようになることが確認された。ただし,機械を使う技能だけに注目すると,勤続15年程度で成長が止まるか,退化してしまう。その後,求められる能力は,機械を使う技能ではなく,工程を設計する能力であった。ただし,この能力を身に付けられる生産技能者は一部に限られる。新しい工程の設計は,低熟練の定常作業を生み出し,技能が退化した作業者や非正規労働者に仕事を与える。言い換えれば,既存の技能分布に合わせて工程は設計される。つまり,技能分布と工程設計の間には相互連関の関係があった。なお,長期的にみると,低熟練の定常作業の増加は,工程設計力の育成を妨げるので,企業は技能形成のためにも非定常の難しい仕事を残していた。

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© 2015 社会政策学会
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