2014 年 3 巻 1 号 p. 31-46
Krautら(1998)が最初のインターネット・パラドクスに関する論文を発表した当時と比べ,インターネット利用環境は大きく変化した。特に近年の社会的な関係に基づくソーシャルメディアの普及は,実社会での社会的な関係に大きな影響を及ぼす可能性がある。その一方で,ソーシャルメディア上での人間関係に負担を感じるいわゆる「ソーシャルメディア疲れ」などの議論もある。すなわちソーシャルメディアの利用によって友人関係や精神的健康にネガティブな影響を及ぼすソーシャルメディア・パラドクスの可能性が考えられる。そこで本稿では,2011〜2012年にかけて実施したインターネットを用いたパネル調査のデータを用いて,このソーシャルメディア・パラドクスの可能性について分析を行った。ソーシャルメディアの新規利用者では,よく投稿をする人が一時的に友人関係満足度にポジティブな影響を及ぼしているが,全体でみるとソーシャルメディアをよく投稿するほど友人関係満足度や孤独感に対してネガティブな影響を及ぼす傾向が示された。つまり社会的な関係を基礎とするソーシャルメディアの利用において,友人関係や精神的健康にネガティブな影響を及ぼすというソーシャルメディア・パラドクスの存在の可能性を示した。