社会情報学
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シンポジウム報告
集めないビッグデータ:情報の分散管理による個人の尊厳と公共の福祉
橋田 浩一
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キーワード: 個人データ, 分散PDS, PLR, VRM
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2015 年 3 巻 3 号 p. 87-98

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抄録

個人データの集中管理とは, 管理者が多数の個人のデータをまとめて管理することであり, これによって多数の個人のデータが一挙に活用されたり漏洩したりし得る。一方, 個人データの分散管理とは, 個人または代理人が本人分のデータのみを管理することであり, 一挙に利用されたり漏洩したりするデータは1人分に限られるので, セキュリティが高い。個人が本人のデータを電子的に蓄積して他者と安全に共有し活用するための仕組みをPDS (個人データ保管庫)と言う。個人はPDSによって自らの利益を高めるように自分のデータを活用することができ, こうしてB2Cサービス全体の社会的価値も向上する。 PDSにも集中型のものと分散型のものがあり, 分散PDSの方がセキュリティと利便性が高い。分散PDS にもサーバ主導のものと個人端末主導のものがあるが, PLR (個人生活録)は個人端末主導の分散PDSであり, 個人端末もサーバ側の仕組みもすでにコモディティになっているものを使うので, 導入・運用コストが非常に小さい。マーケティング, 電力小売の自由化, マイナンバー, スーパーハイビジョン放送, 医療制度改革等に伴う個人データの安全・安価な管理と活用に対するニーズの高まりがPLRのような分散PDSを普及させる契機になるものと考えられる。

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© 2015 一般社団法人 社会情報学会
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