抄録
なゆた望遠鏡のドームフラットシステムを刷新した。従来のスクリーン斜めからの一点照射に代わり、ランプを望遠鏡トップリングに設置した4点正面照射へと改修した。また西はりま天文台近赤外撮像装置NIC(Nishi-harima Infrared Camera)を用いて新しいランプシステムの性能評価を行なった。NICのJ bandを用い、新しいドームフラット・ポジションとして望遠鏡高度40◦、ドーム方位と望遠鏡方位の角度差71◦が導出された。続けて、トワイライトフラットが十分均一な光源であると仮定し、トワイライト画像との比較からドームフラットの円周方向の一様性と、半径方向の一様性について調査した。ドームフラット画像の円周方向にはJ、H、Ks band共に依然として輝度の偏りが存在することが明らかになった。しかしながら3つのband全てで円周方向の輝度のばらつきによる標準偏差は、平均値の1%以下であった。またJとH bandではドームフラットの半径方向の輝度の偏りは検出できなかったが、その標準偏差の上限値としてそれぞれ8.5%と3.8%を得た。一方Ks bandではわずかに画像中心のカウントが高く、周縁部で低くなる傾向が見られた。カウントの平均値に対する標準偏差は2.6%であった。旧ドームフラット画像では、トワイライトフラットに対する差異の標準偏差はJ bandで14%、H bandで8.8%、Ks bandで17%であった(cf. 石黒 他 2011)。したがって、新しいドームフラットは旧ドームフラットに比べ4割から一桁程度、輝度ムラが小さくなった。