2021 年 48 巻 4 号 p. 197-210
医学部における卒前の臨床実習で求められる医療面接技能,プレゼンテーション技能,臨床推論能力の養成のため,ICT (Information and Communication Technology) を利用した実践型Problem-Based Learning (ePBL; electronic PBL) を2019年に導入した。
ePBLでは,グループ内の学生全員が各自のデバイスから同時に課題スライドに記入し,症例に関するプロダクトの共同作成を行った。患者情報の一部(医療面接・神経所見・心雑音など)を動画・音声で提示することで,視覚・聴覚情報から,分析・言語化する課題を設けた。また医療面接で聴取すべき項目や行うべき身体診察を列挙するだけでなく,実際の医療面接・診察手技のロールプレイの撮影を課題とした。ICTを利用することで,実践的なPBLを最小限の教員配置で実現可能となった。2020年の新型コロナウィルス感染症の流行(以下,コロナ禍)により,全員が自宅からの遠隔グループワークとなったため,模擬診察など一部のロールプレイや動画撮影が困難であったが,ePBL形式やICTを活用した動画視聴課題やチューターレス運用に関して学生から高い評価が得られた。本邦における医学教育の課題を解決しうる新たな教育手法として,導入の経過から今後の課題に関して検討した。