口腔・咽頭科
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総 説
保育園児の上咽頭細菌叢の変遷
伊藤 真人
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2010 年 23 巻 1 号 p. 55-58

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抄録

過去25年間の金沢市の統計によると, 1歳以下のいわゆる未満児保育の子どもの数は, 15年程前から明らかな増加を示し, 2000年度には1985年以前の約2倍に達している. このように低年齢化した集団保育が気道感染症難治化のリスクファクターと考えられている.
我々は10年前から同一の保育園において, 園児の上咽頭細菌叢の状態を調査してきた. 1999年当時は, インフルエンザ菌の耐性化はそれほど進行していなかったが (gBLNAR: 24%), 2004年頃にはインフルエンザ菌に占めるgBLNARの割合が急増した (78%). 一方我国においては, β-ラクタマーゼ産生株の検出頻度は低い状態が続いてきたが, 2007年の保育園調査においてはじめてβ-ラクタマーゼ産生株のgBLPACRが検出された (インフルエンザ菌の20%). さらに2008年の調査では著明な増加がみられ, インフルエンザ菌の83%がgBLPACRであった. パルスフィールドゲル電気泳動法 (PFGE) では, 検出されたgBLPACRは全て同一クローンであることから, 保育園内でのgBLPACRの単一クローン播種と判明した. 我国ばかりではなく, 世界的にも極めて検出頻度の低いgBLPACRの急激な播種伝播が確認されたことから, 我国における今後の, インフルエンザ菌の更なる耐性化の進行が危惧される.

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© 2010 日本口腔・咽頭科学会
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