口腔・咽頭科
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総 説
上咽頭細菌叢のダイナミズム
保富 宗城山中 昇
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2010 年 23 巻 1 号 p. 59-63

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抄録

上気道感染症の第一段階は, 外界から鼻腔に進入した病原微生物 (ウイルスや細菌) が鼻咽腔に定着し, 上咽頭細菌叢を形成することより始まる. 健常児においては, 生後まもなく上咽頭にビリダンス連鎖球菌, 非溶血性連鎖球菌, ジフテロイド, ナイセリア属などの病原性をもたない常在細菌叢が形成され, その後生後3ヶ月頃より肺炎球菌, インフルエンザ菌, モラクセラ・カタラーリスよりなる細菌叢が形成される. 細菌叢が維持される為には, 細菌が絶えず変化するともに, 変化に富んだ細菌叢である必要がある. 上咽頭における肺炎球菌血清型の定量的変化を検討した結果では, 上咽頭には絶えず一定量の肺炎球菌が存在するとともに, 2~3種類の血清型が混在することが判明した. 上咽頭ではこれらの細菌が混在し, 相互干渉することにより細菌叢が維持されていると考える. また近年の検討では, 細胞外に感染すると考えられてきたインフルエンザ菌が, 上皮細胞内に侵入することが判明している. 細菌が上皮細胞内に侵入することにより長期に保菌されることが, 上咽頭細菌叢が形成され維持される要因と考える.
上・下気道感染の治療および予防には, 上咽頭細菌叢のもつダイナミズムを十分に理解するとともに, 効果的に上咽頭細菌叢を制御することが重要である.

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© 2010 日本口腔・咽頭科学会
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