2016 年 29 巻 2 号 p. 195-199
扁桃の転移性腫瘍は稀である. 今回我々は扁桃転移によって発見された肺小細胞癌例を経験したので報告する.
症例は67歳男性, 咽頭違和感, 呼吸困難感を主訴に近医内科を受診, 右扁桃肥大を指摘され, 当科へ紹介された. 生検では小細胞癌を疑う所見を認めた. 頸胸部 CT で, 右頸部リンパ節腫脹と左肺の腫瘤があり, 経気管支生検により, 肺小細胞癌 cT2N0M1b cStage IV (右口蓋扁桃,右頸部リンパ節転移) と診断された. 呼吸器科で化学療法を施行したが, 扁桃・頸部, 胸部ともに腫瘍は残存した. 手術治療による局所制御が有用と考え, 右扁桃腫瘍切除術と右頸部郭清術を行った. 術後頭頸部領域は再発なく経過し, 現在肺病変に対し化学療法が施行され, 担癌生存中である.