2017 年 30 巻 1 号 p. 117-122
舌根にできる腫瘍はそのほとんどが扁平上皮癌であり, 小唾液腺由来の腫瘍は稀である. 粘表皮癌などの小唾液腺腫瘍に対する治療は手術が第一選択となる. 舌根部へは経口腔, 頸部外切開などさまざまなアプローチ方法がある.
本症例は嚥下困難感を主訴に受診した 77 歳男性で, 舌根部に 3cm と比較的大きな腫瘍を認めた. 生検で粘表皮癌と診断され, またリンパ節転移を伴わなかったことから,「舌正中離断法」による腫瘍摘出術を行った. 術後は機能的・整容的な障害や, 再発も来さず順調に経過している. 舌正中離断法は, 低侵襲で特別な手術支援機器を必要としないことから, 適応を選べば優れた方法と考えられる.