2021 年 34 巻 1 号 p. 93-96
唾液腺腫瘍において筋上皮腫は1%以下とされ,比較的まれな疾患とされているが近年その報告数は増加している.唾液腺筋上皮腫の中では1番頻度が高いとされる耳下腺由来の筋上皮腫症例を経験したため報告する.症例は35歳男性,右耳下部腫脹のため受診し,画像所見や術前穿刺吸引細胞診から多形腺腫が疑われた.耳下腺浅葉部分切除術を施行し,病理所見や免疫染色所見から筋上皮腫と診断された.手術により完全に切除でき,再発なく経過している.術前に筋上皮腫の診断には至らなかったが,良性腫瘍である筋上皮腫も悪性転化の可能性があり,手術による一塊切除が推奨される.術後再発の有無に関して,長期的な経過観察が必要であると考える.