口腔・咽頭科
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耳下腺悪性腫瘍の取り扱い: 針生検を用いた術前診断について
佐々木 慶太
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2008 年 20 巻 3 号 p. 279-285

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抄録

耳下腺悪性腫瘍はその組織型の多様さと術前診断の難しさ, そしてその組織学的悪性度が予後に大きく影響するという特徴がある. 当科ではMRIや超音波画像診断にて悪性腫瘍が疑われる症例に対してcore needle biopsyによる術前病理組織診断を試みており, 術前診断で高悪性度癌と診断された症例に対しては顔面神経の即時再建を併施した耳下腺拡大全摘を行っている.
1996年1月から2005年12月までに当科で根治治療した49例を対象にcore needle biopsyの有用性を検討し, この結果をもとに治療を行った悪性度, 病期別の生存率について検討を行った. また, 耳下腺高悪性度癌に対する耳下腺拡大全摘術における当科で行っている工夫について報告する
Core needle biopsyを施行した21症例について, 良悪性の判定が可能であった症例の割合は95% (20/21), 腫瘍の悪性度まで診断が可能であった症例の割合は76% (16/21), 病理組織型が最終病理組織診断と一致したものの割合が67% (14/21) であった. 臨床病期別の5年生存率はstage I (100%), stage II (66.7%), stage IV (54.5%) であった. 病理組織学的悪性度別の生存率については, 低・中悪性度癌の5年生存率は100%であるのに対し, 高悪性度癌は61.5%という結果であった. 耳下腺癌の治療を行う際には, この組織学的悪性度を考慮した治療方針を立てることが重要であると考えられた.

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