下口唇広範切除後の欠損に対して, 大腿筋膜による口唇・口角吊り上げを併用した前腕皮弁再建により良好な機能と形態を維持できた症例を経験した. 症例は78歳女性, 右下口唇粘膜に30×20mmの腫瘤を認め, 生検の結果, 扁平上皮癌の病理診断であった. 安全域を20mmつけ, 口角から下唇の顔面皮膚合併切除, 下顎骨辺縁切除, 頬粘膜・口腔底・下歯肉合併切除を含む腫瘍摘出後の欠損に対して, 遊離前腕皮弁により口腔内と顔面を被覆し, 大腿筋膜による口唇・口角吊り上げを併用して再建した. 術後, 開口障害, 口腔閉鎖不全なく, 審美的にも良好である. 比較的広い欠損にも対応可能であり, 口角・下口唇再建に対する選択肢の一つになりうると思われた.