水利科学
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一般論文
水資源政策の長期展望
―健全な水循環系を基本的視点に―
高野 安二
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1995 年 39 巻 1 号 p. 87-125

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抄録

世界が変わり, アジアが変わり, 日本は戦後50年を経て大きく変わりつつある。今後,21世紀を見通した場合, 我が国の経済社会は新たな日本に向けた歩みとなり, それを支える国土づくりには新たな展開が求められている。多面的な機能を持つ水は, 国上の重要な基盤として, その複雑さを踏まえ新たな長期的な視点が不可欠といえる。 我が国においては, 国土をめぐる水についてこれまで治山治水, 水資源対策等が進められてきた。水資源については, 西暦2000年にはおおむね水需給のバランスがとれることを目標として, 関係者の努力と協力により水資源の開発及び有効利用が推進されてきている。これにより,全国的な水需給については, 中長期的には, おおむね一定レベルではバランスの確保が可能になるものと想定されるが, 平成6年の列島的な渇水を見るまでもなく, 今後とも, それぞれの地域における水資源の安定供給の確保は重要な政策課題であり, 適正な利水安全度の確保, 異常渇水 対策といった問題と併せ積極的に取り組むことが必要となっている。それに加えて, 飲み水の安全性やおいしさの確保, そのための水源や流域における水質保全等が課題となっており, 最近の国民生活の質の向上に対する関心の高まりを受けて, やすらぎと潤いのある水辺環境の確保や自然環境と調和した水循環といった問題に取り組むことが求められている。さらに, 我が国の人口動向や経済社会の動向, 持続可能な開発の視 点が必要となっている地球環境問題等水資源を取り巻く環境は大きく変 化しており, 水資源に対しても様々な課題をもたらしている。 以上のような水資源を取り巻く変化に対応し,適切かつ効率的な水資源行政を推進するためには, 長期的・基本的な視点に基づき, 今後の水資源政策のあり方を明らかにすることが必要である。このため, 国土庁水資源部長の依頼により,水資源基本問題研究会が水資源政策長期展望の検討を行い, 中間的な取りまとめがされたので, それを基に本稿を記し報告をする。我が国の新たなる国土づくり, 水資源政策に向けて参考とされるとともに, 関係各位よりの一層の御指導を願うものです。

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© 1995 一般社団法人 日本治山治水協会
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