大正・昭和戦前時代は世界恐慌や戦争など,グローバルな社会情勢が河川改修事業にも大きく影響した。この期間の水害被害は室戸台風を除けば,比較的少なかったが,治水対策は粛々と進められ,急激な国の発展に対して,水管理も制度や技術面から変貌を遂げていった。昭和初期には荒川放水路が完成し,大河津分水路の復旧工事が終わるなど,大規模治水施設が誕生した。大正10(1921)年には第二次治水計画が制定されたが,経済情勢の悪化で進捗せず,室戸台風の水害により,計画は破綻した。河川事業や下水道事業なども失業救済事業として行われた。経済の発展とともに,建物や道路が増え,小河川や水路が暗渠化され,河川・水路網密度が減少していった。このように,当時の水害,治水技術,洪水対応技術などをはじめとする大正・昭和戦前時代のすぐれた水管理技術を調べて,水管理に関する経験や実績より,現代でも有効な考え方や技術を整理・分析した。