北海道における稲作に必要な灌漑用水量のピークは,代搔きが行われる5月中旬から下旬であったが,近年,7月上旬に新たなピークが出現している。7月上旬に大量の灌漑用水が必要となる理由は,田に深く水を張ることで稲を寒さから守る深水灌漑という栽培技術が普及したことによる。深水灌漑を行う時期に必要となる水量は,代搔きを行う時期に必要となる水量にほぼ匹敵するが,大量の融雪水により河川流量が増大する代搔き期と異なり,深水灌漑を行う7月上旬は,河川流量が減少する時期に当たる。本研究は,石狩川中流域の河川流量が7月上旬に必要とされる水量を下回る確率を求めることで,7月上旬の渇水リスクが高いこと,また,ダムによる流量調整効果がない場合にはそのリスクがさらに高くなることを明らかにした。さらに,今後,温暖化が進み,融雪時期が現在よりも早くなった場合には,7月上旬における水資源の不足が現在よりも一層懸念される状況に陥ることを明らかにした。