水利科学
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特集:平成29年7月九州北部豪雨と流木災害
水害被害を助長する土砂・流木の影響
末次 忠司
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2019 年 62 巻 6 号 p. 56-69

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抄録

平成29(2017)年7月の九州北部豪雨災害で特徴的なように,最近の水害では洪水氾濫だけでなく,土砂災害と複合して被害を助長する事例が多く見られる。平成23(2011)年以降で見ても,紀伊半島水害,伊豆大島土砂災害など,多くの水害事例で豪雨に伴い,土砂崩れや土石流が発生し,土砂や流木が水害被害に大きな影響をおよぼした。本報では一連の水害被害の降雨原因や被災状況などを比較しながら整理・分析するとともに,土砂流出状況や流木の発生・捕捉状況から,土砂・流木が水害被害におよぼす影響について分析を行った。 その結果,被災規模や土砂流出量は紀伊半島水害が最も大きかったが,平成29年7月九州北部豪雨災害における流域面積あたりの流木発生量は,従来の水害に比べて非常に多かったことが分かった。また,いくつかの事例では砂防堰堤による流木等の捕捉効果が見られたので例示した。最後に今後のハード対策として,土砂氾濫流対策には石積みが考えられ,またソフト対策としては,減災効果が高いと考えられる愛知県岡崎市や熊本県の避難対策を示した。

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© 2019 一般社団法人 日本治山治水協会
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