水利科学
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「後世に伝えるべき治山」60選シリーズ
磐井川地区民有林直轄治山事業(岩手県一関市)
宮前 崇
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2020 年 63 巻 6 号 p. 125-137

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抄録

岩手県一関市西部に位置する磐井川地区は,地すべりの多発地帯であり,昭和22(1947)年のカスリン台風や昭和23年のアイオン台風では,地すべりを含む大規模山腹崩壊が発生し,一関市街地へ土砂流入等の甚大な被害をもたらす要因となった。その後,昭和30年代には融雪等により地すべりの動きが活発化したため,岩手県から国による直轄事業着手についての強い要請を受け,昭和44(1969)年度に青森営林局(当時。現東北森林管理局)から直轄地すべり防止事業に着手した。 平成20(2008)年の岩手・宮城内陸地震では,当時地すべり対策済の区域内では甚大な災害は起きなかったものの,震源に近い事業地周辺で大規模な地すべりが複数発生したため,事業区域を拡大し一体的に対策することとした。 排水トンネル工や集水井工等の抑制工を中心に,アンカー工や杭工等の抑止工,地すべり末端部の侵食防止を目的とした渓間工等を施工してきたところ,地すべりの動きは沈静化し,平成31(2019)年3月,半世紀にわたる本事業の所期の目的を達成した。

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© 2020 一般社団法人 日本治山治水協会
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