日本の経済成長の弊害として水循環にかかる様々な流域課題が顕在化し,水循環の健全化に向けた活動が全国的に流域ガバナンスを形成しながら展開されてきた。水循環基本法が制定され,我が国で初めて,流域ガバナンスの概念が示された。しかし,流域ガバナンスの概念やそれに不可欠な外形的な視点・機能を整え,その枠組みを適応すれば,持続的な活動へとつながるのではなく,こうした視点・機能を具備した上で,構造的に,各ガバナンスの枠組みの中で各主体(ステークホルダー)間において,ある要素が相互作用(インタラクション)を及ぼし,ガバナンスの生成や持続性,場合によってはガバナンスの機能不全や失敗に陥らせていると推測される。本稿では,各主体間の相互関係に着目することとし,鶴見川流域を事例にして,流域ガバナンスが構築される前後,その後における流域ガバナンスの変化を観察することで,流域ガバナンスの持続性に不可欠な要素とは何か提言を試みるものである。