水利科学
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一般論文
農業構造の変化に対応する水田配水パイプラインの水利用機能と水理構造
中 達雄中矢 哲郎樽屋 啓之
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2021 年 65 巻 1 号 p. 1-30

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抄録

水田灌漑へのパイプラインの導入から約50年を経て,大規模経営体が主流となった農業構造と農業水利の現状から,今後必要とされる低平地水田配水パイプラインの水利用機能と水理構造を提案する。その前提として,農林業センサスと関連する3地区の現地調査から,大規模経営体と残留する小規模農家も視野に入れた水田配水ブロック内の今後の経営体の形態と水利用構造を想定する必要性を考察した。そして,既存の農業水利に関する農業経営学分野の研究成果を援用して,配水ブロック内の水管理主体の将来像や目指す水管理方式を示した。 水管理の省力化の必要性を踏まえ,パイプラインの要求性能を整理して設計改善の基本を提案した。配水槽方式の導入による最適設計と,パイプラインの中間バルブによるブロック配水などの有用性を考察した。さらに,省力化や管理者の高齢化に対応するためにパイプライン水管理への情報通信技術(ICT)の応用についてソフト・ハードの両面から考察した。その中で圃場の水管理作業を幹線・支線水路を管理する土地改良区などの水管理主体が代替し経営体が行う営農作業から分離する考えを明示した。

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© 2021 一般社団法人 日本治山治水協会
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