水利科学
Online ISSN : 2432-4671
Print ISSN : 0039-4858
ISSN-L : 0039-4858
一般論文
既設治山ダムを活用した流木捕捉工の開発
~流木災害防止緊急治山対策プロジェクト~
中澤 敏雄
著者情報
ジャーナル フリー

2021 年 65 巻 1 号 p. 44-62

詳細
抄録

平成29(2017)年九州北部豪雨による甚大な流木災害等の発生を受けて,林野庁では,概ね3年間で緊急的・集中的に流木捕捉式治山ダムの設置などの流木対策を推進することとしている。そして中部森林管理局では,流木捕捉式治山ダムの新設に加えて,局管内の国有林に設置した約1万基の治山ダムを有効活用するための工法として「流木捕捉工」を考案し,更なる流木対策の推進に結び付けたいと考えている。 流木を直接捕捉する鋼製の流木止め(スリット)1本と独立した基礎コンクリートを組み合わせた「流木捕捉工」は,既設治山ダムの堆砂末端付近へ横一列に設置する。施工方法は,設置場所の土砂掘削を行い,地すべり防止工の集水井など縦穴を掘る際に用いる鋼製の支保材(以下,「ライナープレート」という。)を残存型枠として設置して,その中にコンクリートを打ち込み,その天端へ流木止めを据え付けて完成となる。 試験的な取り組み段階であるが,同等規模の流木捕捉式治山ダムの新設に比べて施工が容易で安価であり,簡易な方法で流木止めを渓床全幅まで広く設けることが可能であることから,より多くの場所において流木対策に役立てることができるものと考える。また,危険な渓流内での作業時間を短縮することが可能であり,作業者の安全対策上も有効な工法と考えられる。今後,渓床の変動調査や洪水時の状況確認などモニタリングを継続的に実施し,更なる流木捕捉技術の洗練に努めて参りたい。

著者関連情報
© 2021 一般社団法人 日本治山治水協会
前の記事 次の記事
feedback
Top