2014 年 80 巻 6 号 p. 946-955
サケの遡上が途絶えた豊平川で,放流が再開されてから 30 年以上自然産卵が続いていることから,野生魚による個体群存続の可能性を調べた。標識放流により放流魚が識別可能な 2003-2006 年級群において野生魚の割合が高く(59.2-75.8%),迷入魚の割合も低かった(0.6%)。豊平川での卵から稚魚までの生存率は 12.6% と推定され,卵が稚魚まで育つ時期の河川環境が悪い可能性が示唆された。一方,野生魚と放流魚間で成熟年齢や繁殖時期に違いが認められ,約 7 世代で生じた豊平川への環境適応だと考えられた。