抄録
ラットの膵虚血再灌流モデルを作成し, 膵組織障害に対するmatrix metalloproteinase (以下MMP) inhibitorの投与効果を検討した. まず, 3時間膵虚血後再灌流を3時間, 6時間, 10時間に設定して血清膵酵素値, 病理組織像を比較した. 血清膵酵素値は再灌流6時間でピークとなった. 病理組織像では再灌流時間が長くなるにつれて組織変化が強くなり, 10時間では著明な炎症細胞浸潤, 細胞の核変性, 細胞壊死を認めた. 次に虚血3時間―再灌流10時間モデルにおいて, MMP inhibitorの投与効果について検討した. 血清amylaseはMMP inhibitor投与群では非投与群に比較し抑制効果を認めなかったが, 血清lipaseは抑制効果を認めた. 病理組織像ではMMP inhibitor投与群において好中球数, 核の変性, 壊死の3項目のscoreにおいて有意差が見られ組織障害が軽減された. 以上より, 膵虚血再灌流障害ではMMP inhibitorの投与によりその障害は軽減されると考えられた.