2005 年 20 巻 6 号 p. 517-521
IPMNが多中心性に発生することはすでに遺伝子学的に証明されているが, 現時点では病変それぞれの進展予測を行うことは不可能である.
当科における単発IPMNの切除の対象は, Borderline (moderate dysplasia ; 境界病変) の段階で切除することである. 多発例の場合もこの規則にしたがい, 多発した病変の中でBorderline以上と判定できるものを切除の適応とし, それ以下の病変は切除せずに極力経過観察を行うべきであると考える.
浸潤癌以外の多発病変では各種縮小手術が適応となりやすいが, 多発例でこれらを組み合わせて行う場合や切除範囲を通常より拡大して行う場合, 病変が遺残しないよう十分に注意すべきである. 膵全摘術ではインスリン注射の管理と術後のQOLが問題となるため適応は限られる.
切除に際しては, 術前の詳細な情報と術中超音波検査所見を総合して病変の完全切除を達成すべきであり, 膵管再建においては再発時の精査を考慮して膵胃吻合を選択している.