膵癌の塩酸ゲムシタビン(GEM)に対する感受性や耐性の分子メカニズムは明らかにされていない.本研究ではヒト膵癌細胞株PANC-1を対象にして,GEMによるアポトーシス関連遺伝子発現の変化を検討した.cDNAマイクロアレイ解析により,GEMを作用させたPANC-1細胞株において発現量が変化した372個の遺伝子が抽出された.これらの遺伝子群をIngenuity Pathway Analysis(IPA)を用いて解析したところ,gene expression,cell deathやDNA replicationに関する遺伝子がとくに変化していた.発現スコアの高かった上位2グループのパスウェイ解析により,p53とmycの分子経路がPANC-1のGEM処理に連動して変化していた.半定量的RT-PCR法においても,p53関連因子であるTP53INP1のmRNA発現はPANC-1に作用させたGEMの濃度依存性に増加していた.以上の結果より,膵癌細胞のGEMに対する感受性や耐性の分子メカニズムに,p53およびmyc経路の関与が示唆された.