1970年代から今日までの自身の膵臓病研究の軌跡と今後の展望について記載した.膵の酵素学的診断法の研究は重要であり,ラジオインムノアッセイ法の開発により進歩を示したが,依然膵癌診断には十分ではない.消化管ホルモンの研究は分離膵腺房細胞採取が可能となり,またその血中動態の把握が進み,かなり研究が進んだが,やはり膵疾患の病態を正確に把握出来るまでには至っていない.その後分子生物学的手法の開発により,遺伝子異常解析も詳細に研究されたが,特異的なものは少ない.最近,膵癌の診療ガイドラインが作成されたが,早期診断法を目指した物にはなっていない.膵癌治療に関しては一部無作為化比較試験が行われ,標準治療法が確立され,また抗癌剤の進歩により延命効果も認められるようになってきた.今後はハイリスクの設定,膵臓病専門医の養成等を積極的に行い,難治膵臓病の克服に努めるべきと思われる.