膵臓
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特集:膵炎研究モデルの作製,選択,適用
化学物質DMBAによる膵発癌マウスモデルはヒト膵研究に適用できるか?
佐藤 賢一木村 憲治菅野 敦濱田 晋廣田 衛久下瀬川 徹
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キーワード: 膵発癌モデル, マウス, DMBA
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2008 年 23 巻 1 号 p. 46-53

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抄録

膵癌早期発見のためには膵発癌機構を解明することが不可欠である.そのためには,遺伝子解析も作成法も容易である動物モデルの開発が必要と考えられる.我々は化学発癌物質DMBA投与によってマウス膵発癌モデルを作成し,それがヒト膵癌研究に応用できるか否かを検討した.DMBA処理2週後からマウス膵にtubular complexが観察され,1ヶ月でPanIN類似病変,2ヶ月後3ヶ月後にかけて癌病変の形成が認められた.癌は肉腫様形態を呈したがcytokeratin陽性,vimentin, chymotrypsin陰性で膵管由来の癌と考えられた.過形成病変および癌病変において,ヒト膵癌同様,悪性度の進行に伴って,smad4発現の消失,cyclin D1, p53発現の増強,Notchシグナルの活性化が認められた.しかし,ヒトで最も初期にまた最も高頻度に異常の認められるK-ras遺伝子の変異は確認されなかった.これらの事から,本マウスモデルは,多くのヒト膵癌とは初期の発癌過程は異なるが進展過程に関与する遺伝子異常には類似性がみられ,ヒトにおける発癌過程の後期から癌進展過程の研究に適用できる可能性が示唆された.

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© 2008 日本膵臓学会
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