2008 年 23 巻 1 号 p. 54-59
膵管内乳頭粘液性腫瘍(IPMN)の臨床研究は多岐に渡り進行している.疾患病態の更なる解明ならびに治療への展開にはIPMN動物モデルの確立が有用と思われる.我々は,主膵管内乳頭腺癌(IPC)を高率に誘発することが可能なハムスターモデルを作成した.このモデルの特徴は,下部共通管結紮及び胆嚢十二指腸吻合を施行することで膵管内へ胆汁が逆流し,胆汁刺激により主膵管上皮の細胞回転亢進をきたすことにある.このモデルに膵癌誘発剤を負荷すると,通常型浸潤膵癌のみならずIPCが高率に発生する.誘発されたIPCは著明な膵管内乳頭状増殖を示し,またslow growthであることが示唆され,これらの特徴はヒトIPMNと類似していた.今後このハムスターモデルを用いた種々の検討が,ヒトIPMNにおける臨床課題を克服する一助となり得ると考えられる.