2008 年 23 巻 4 号 p. 473-480
IPMNの病態についてはさまざまな未解決の問題点がある.臨床的には,浸潤はどの程度になったら画像診断その他でとらえられるか.浸潤し始めてからもslow growingか,浸潤が明らかになってからの手術で間に合うか,さまざまな進展度の病変に対して,どのような手術がもっとも優れているか,どのような縮小手術が可能か,などである.これはIPMN由来浸潤癌が通常型膵癌と比較してどの程度悪性か,という問題でもある.
われわれの経験では,IPMN切除症例60例のうち14例がIPMN由来浸潤癌で,その5年生存率はKaplan-Meier法で約40%であった.IPMNが浸潤し始めてからも臨床的にslow growingであることを示唆する所見であるが,IPMN非浸潤癌症例の5年生存率100%に比較すればけっして満足すべき数字ではない.したがって,これまで思われていたより悪性の疾患であることを考慮して治療にあたるべきである.さまざまな縮小手術が試みられているが,「縮小手術をしたことによって宿主(患者)を再発死させてはならない」という腫瘍外科手術の大前提を念頭に置きながら,機能温存によっていかなる恩恵を受けたかを客観的に示していくことが重要である.機能温存手術の適応は厳密にすべきである.