膵臓
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症例報告
6か月の自然経過を観察した破骨細胞型退形成性膵管癌の1切除例
石井 博道前田 敦行松永 和哉金本 秀行岡村 行泰杤久保 順平成本 壮一城原 幹太大城 国夫長尾 厚樹佐々木 恵子上坂 克彦
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2008 年 23 巻 4 号 p. 501-509

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抄録

症例は81歳男性.膵腫瘍を指摘され当院を受診した.超音波検査で膵頭部に境界明瞭な4cmの低エコー腫瘍を認め,内部は一部嚢胞化していた.CTでは膵腫瘍は多血性病変として描出され,内部に低吸収域を認めた.画像上嚢胞変性を伴う膵内分泌腫瘍と診断したが,生検は本人の希望で施行できず,高齢であることも考慮して経過観察とした.初診から約6か月後のCTで腫瘍は5.2cmに増大し,内部の低吸収域も増大したので悪性非機能性内分泌腫瘍と診断し,亜全胃温存膵頭十二指腸切除術を施行した.組織学的には,破骨細胞類似の多核巨細胞と異型単核細胞が混在して増殖し,一部に腺癌成分も含まれており破骨細胞型退形成性膵管癌と診断した.嚢胞と思われた部位には赤血球の集簇と壊死を認めた.術後12か月経過した現在,無再発生存中である.退形成性膵管癌は腫瘍径が大きくなるに従い内部に出血·壊死を来すことがある.画像上,境界明瞭な充実性腫瘍で内部に低吸収領域を認める膵腫瘍では本疾患が鑑別診断の一つになると思われた.

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© 2008 日本膵臓学会
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