2008 年 23 巻 5 号 p. 600-607
症例は56歳女性.肝血管腫にて,1996年7月から当院通院経過観察中であった.2006年9月,画像検査にて初めて主膵管の拡張を指摘された.明らかな腫瘍の存在を指摘し得なかった為,当院外来通院にて肝血管腫とともに厳重に経過観察の方針となった.2007年2月,画像検査にて主膵管径のさらなる増大,膵頭部の分枝膵管の拡張と内部に壁在結節を疑われ,膵頭部分枝型膵管内乳頭粘液性腫瘍と診断した.2007年3月,亜全胃温存膵頭十二指腸切除術を施行した.病理診断は分枝膵管から主膵管にまで広がる腺腫であった.術後経過良好にて第12病日に退院した.現在術後13ヶ月,再発を認めていない.膵管内乳頭粘液性腺腫において,他疾患の経過観察中に偶発的に発見され初期像からの経過を観察された切除例は,その自然経過を知る上で貴重な症例であり,文献的考察を加え報告する.