2009 年 24 巻 4 号 p. 532-536
症例は60歳,男性.心窩部痛を主訴に近医に入院.入院時,腹部CT検査でGrade IVの重症急性壊死性膵炎と診断され,保存的治療が施行されたが,食事開始とともに腹痛,発熱が再燃したため,当センターに転院となった.発症1か月後の腹部CTでは膵体部を中心に仮性膵嚢胞を認めたが,保存的加療で改善したため,第82病日に退院した.退院2か月後,膵嚢胞の増大を認めたため,開腹下に膵嚢胞胃吻合術が施行された.腹部CT検査およびEUSでは膵頭部に異常を認めなかった.術後6か月後の腹部CT検査で膵頭体部に40mm大の腫瘤および肝に多発転移を認めた.術後9か月後に吻合部への腫瘍浸潤による消化管出血あり,4日後に死亡した.膵癌に急性膵炎を合併することは時に認められるが,重症化し,巨大な仮性嚢胞を生じることはまれである.自験例では経過中に画像上で膵癌の存在を確認できず,進行した状態で発見された.膵癌が重症膵炎の原因になりうることを念頭におく必要があると考え報告する.