膵臓
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症例報告
非典型的な画像・病理所見を呈した,膵粘液性嚢胞腺腫と考えられた一例
小林 智上野 誠大川 伸一亀田 亮宮川 薫田村 周三山本 直人森永 聡一郎亀田 陽一
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2011 年 26 巻 6 号 p. 725-733

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抄録

症例は70歳,女性.上腹部痛あり,精査となった.造影CT・MRI・EUSにて,膵尾部に嚢胞性病変が認められた.2.5cm大・球形で皮膜はないが,内部に隔壁を認め,結節隆起の存在も疑われた.ERCPにて病変部と膵管との交通が認められたが,乳頭部・膵管内に粘液は認めなかった.膵粘液性嚢胞腫瘍(MCN)が否定できず,膵体尾部・脾合併切除術を施行した.病理所見は,皮膜を有さず,厚い隔壁構造を有する多房性嚢胞性病変であり,内容は濃縮された粘液であった.主膵管は病変内を貫通しており,病変と膵管との交通部は明らかでなかった.嚢胞内皮細胞は単層でわずかに異型を有していた.隔壁や辺縁部の間質は紡錘形細胞が密に存在し,エストロゲン受容体・プロゲステロン受容体が強陽性であったため,卵巣様間質と判断した.皮膜を有さず,膵管と交通を有し,隔壁内に卵巣様間質が存在する点で非典型的であるが,MCNと考えられた一例を経験したため,報告した.サイズがMCNとしては比較的小さいことや,皮膜がないこと,卵巣様間質の分布状態を合わせると,発生早期のMCNであった可能性も考えられ,今後MCNの発生・自然史が明らかになることが望まれる.

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© 2011 日本膵臓学会
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