膵臓
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特集:生活習慣と膵疾患
エタノールが膵導管細胞機能に及ぼす影響
山本 明子濱田 広幸石黒 洋
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2012 年 27 巻 2 号 p. 121-131

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抄録

慢性膵炎は,膵腺房細胞の脱落壊死と小葉間の線維化を主体とする進行性の炎症性疾患であり,慢性膵炎の原因として最多のものがアルコールの多飲である.アルコールによる膵障害に関する細胞レベルの研究は従来から単離膵腺房細胞を用いて高濃度のエタノールに対する作用が検討されてきた.しかし,飲酒後の血中エタノール濃度は通常30mM以下であり(約20mMで酩酊.1 pintのビールの飲酒では,アルコールの血中濃度は5mM程度),飲酒が膵障害を起こすメカニズムとは言えない.著者らは,膵導管細胞を用いて,通常の飲酒後の血中濃度であるエタノール1mMでも膵導管細胞からの水の過分泌を認めること,および,その細胞生理学的メカニズムについてもn-アルコールを用いて検討した.また,膵導管細胞におけるエタノールの水の過分泌が,なぜ,慢性膵炎と結び付くのか,他の研究を交えて述べる.

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© 2012 日本膵臓学会
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