2012 年 27 巻 2 号 p. 206-211
症例は78歳の男性で,膵頭体移行部の主膵管型膵管内乳頭粘液性腺癌(IPMC)に対し,膵頭十二指腸切除術を施行した.術後8か月目の血液検査で貧血の進行,腫瘍マーカーの上昇を認め,上部消化管内視鏡検査を行ったところ,膵胃吻合部に腫瘤を認め,同部より出血を認めた.内視鏡的に止血困難で,また再発の可能性も考えられたため,胃部分切除術,残膵全摘術,脾摘術を施行した.病理組織学的検査にてIPMCと診断され,局所再発,あるいは異時性多発病変であることが示唆された.膵管内乳頭粘液性腫瘍(IPMN)は,過形成や腺腫などの良性腫瘍から,非浸潤性腺癌,浸潤性腺癌までの多様な組織型を含む粘液産生性の腫瘍である.腺癌でも通常型の膵管癌と比較すると予後は比較的良好であるが,局所再発や多中心性発生による残膵再発,通常型膵癌の合併,他臓器癌の合併が多く報告されており,慎重な経過観察が必要である.