抄録
症例は75歳,女性.人工関節置換術時に指摘された糖尿病の精査にて膵と肝に腫瘍性病変が認められ紹介となった.CTでは膵臓と肝臓にいずれも長径約5cmの大きさの,膵には体部から尾部にかけて嚢胞成分を主体とした腫瘤像と,肝にはS6に充実性の占拠性病変が認められた.肝転移を有する膵粘液性嚢胞腺癌と診断し,膵体尾部切除と肝後区域切除術を施行した.術後診断は粘液性嚢胞腺腫と浸潤性膵管癌及び肝転移であった.術後経過は良好で退院され,外来通院で補助化学療法を施行し5年以上再発なく健在である.
粘液性嚢胞腺腫と浸潤性膵管癌の合併は稀であり,肝転移を有する高度進行癌であったが外科切除を施行し長期生存が得られ臨床上興味深い症例と考え報告した.