2014 年 29 巻 1 号 p. 74-82
症例は50歳代,女性.心窩部痛,下痢を主訴として受診した前医で,難治性十二指腸潰瘍,高ガストリン血症を指摘され,当院入院となった.ガストリノーマを疑い画像検査を行ったが,膵頭部周囲にリンパ節腫大を認めた以外には,十二指腸・膵臓に明らかな腫瘤は指摘できなかった.局在診断のため選択的動脈内カルシウム注入試験を行い,胃十二指腸動脈からの刺激で有意なガストリンの上昇を認め,十二指腸・膵頭部領域のガストリノーマと診断し,膵頭十二指腸切除術を施行した.病理組織学的診断は十二指腸水平脚に存在する腫瘍径1mmのガストリノーマであった.他の画像検査では指摘できない微小なNETにおいても,選択的動脈内カルシウム注入試験は腫瘍の局在診断に有用であった.