2014 年 29 巻 6 号 p. 885-891
切除不能膵癌に対する化学療法は長らくゲムシタビン(GEM)が標準治療であった.これに続いてGEM+Erlotinib併用療法,S-1が用いられるようになったが,3つのレジメンには治療成績において大きな差はなかった.FOLFIRINOX治療はフランスで行われたGEMとの比較試験で生存期間に大きな差を持って優越性を示し,欧米では迅速に標準治療の一つに加えられた.日本でもほぼ同様のレジメンで治験が行われ,良好な成績を得たため2013年12月に膵癌に使用が承認された.抗腫瘍効果に優れており,実地医療でも使用され始めているが,4種の薬剤を用い,また薬剤によっては用量も多いため,これまでのレジメンに比べて骨髄抑制を始めとして多くの副作用を伴う.このため実地医療において対象となる膵癌患者の選択には慎重かつ十分な検討が必要であり,治療経過中も丁寧な観察と有害事象に対する迅速な対応が必要である.