2014 年 29 巻 6 号 p. 919-925
症例は76歳,女性.肝細胞癌に対するラジオ波治療後にCTでフォロー中,膵体尾部に膵管拡張を指摘された.CTでは膵内に腫瘤性病変を認めなかったが,EUSを行うと,膵体部に8mm大の低エコー領域を認め,それより尾部側の膵管が拡張していた.ERCPでは,膵体部に主膵管の狭窄と,それより尾部側の主膵管拡張を認めた.その際に施行した膵液細胞診はclass Vであった.以上よりEUSで認められた低エコー領域を浸潤性膵管癌と診断し,膵体尾部切除術,脾臓摘出術を施行した.病理組織学的検討では,膵体部の主膵管と分枝膵管に上皮内癌を認めた.EUSで認めた低エコー領域は,上皮内癌の存在部位とは完全には一致せず,上皮内癌周囲に引き起こされた線維化の部位に相当していた.本症例は上皮内癌周囲に引き起こされた線維化がEUSで腫瘍像としてとらえられた症例と考えられた.