膵臓
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特集 自己免疫性膵炎のup-to-date
自己免疫性膵炎の国際調査
神澤 輝実来間 佐和子千葉 和朗岩崎 将田畑 拓久小泉 理美
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2015 年 30 巻 1 号 p. 62-69

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抄録

自己免疫性膵炎の国際調査は今までに3回施行された.第1回のアジア地区の調査では,アジア諸国の症例の特徴は,多少の違いはあるが日本の自己免疫性膵炎と類似していることが明らかになった.第2回の世界8ヵ国における調査では,世界各国で種々の診断基準により自己免疫性膵炎が診断されていることが分かった.またLPSP例とIDCP例では,多くの臨床像が異なっていた.ドイツやイタリアの自己免疫性膵炎は発症年齢が若く,男性の比率が低く,急性膵炎での発症例が多いことより,かなり多くのIDCP例を含んでいることが示唆された.さらに,ステロイド治療後の再燃率は,比較的長期間にわたりステロイドの維持療法を行う日本に比べて,維持療法をほとんど行わないアメリカ,イタリア,イギリスで著しく高く,ステロイドの維持療法は自己免疫性膵炎の再燃予防に有効な可能性が示唆された.第3回の調査は,世界10ヵ国において国際コンセンサス診断基準によって診断された自己免疫性膵炎1064例が集計された.自己免疫性膵炎2型はアジアに少なく,若年発症で,男性の比率が低く,急性膵炎と炎症性腸疾患の合併率が高かった.ステロイド治療は自己免疫性膵炎1型も2型も奏効したが,再燃率は1型で高く,再燃例はステロイドの再投与や免疫抑制剤の投与によりコントロール可能であった.今後,自己免疫性膵炎における小量のステロイドによる維持量の有用性,再燃の予測因子や再燃例の治療法等を検討し,治療法の国際的なコンセンサスを作る必要がある.

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© 2015 日本膵臓学会
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