膵臓
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症例報告
びまん性の膵腫大を呈し,診断の確定と全身に多発する転移検索にEUS-FNABとソマトスタチン受容体シンチグラフィーが有用であった膵神経内分泌腫瘍の1例
村上 正俊李 倫學槇原 康亮板場 壮一上領 頼之中島 信能平田 文桒野 晴夫馬場 眞吾本田 浩河邉 顕伊藤 鉄英
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2017 年 32 巻 5 号 p. 843-851

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抄録

症例は60歳,男性.膀胱癌の術前CTにて膵のびまん性腫大を指摘されて当科紹介となった.びまん性の膵腫大や膵管の多発狭細像などの画像所見からは自己免疫性膵炎(AIP)が強く疑われたが,EUS-FNABの病理組織診断にて神経内分泌腫瘍(NET,Ki-67指数7%)と判明した.全身の転移検索として施行したソマトスタチン受容体シンチグラフィー(SRS)では,膵頭体部と膵尾部にびまん性の異常集積を認めたほか,CTでは指摘できなかった肝転移巣と多数の骨転移巣が明瞭に同定された.その後の病理所見の再評価にて,膀胱腫瘍もNETであることが判明した.以上より,最終診断を膵NETと全身への多発転移と確定した.膵NETは多彩な画像所見と臨床像を呈する疾患であるが,AIPに類似したびまん性膵腫大を呈し,膀胱にも転移を認めた極めて稀な1例を経験したので,文献的考察を加えてここに報告する.

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© 2017 日本膵臓学会
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