2019 年 34 巻 5 号 p. 254-261
症例は70歳代女性,前医のCTで膵体部に嚢胞性病変を認めたため精査目的で紹介となった.血液検査で腫瘍マーカーは正常域であり,CTで嚢胞性病変の尾側に遅延性に造影される10mm大の腫瘤像を認め,EUSでは腫瘤像の周囲に少量の液体貯留を認めた.約17か月の経過観察中,画像上明らかな変化は認めなかった.しかし鑑別に苦慮したため,確定診断目的にEUS-FNAを施行したところ,膵管内乳頭粘液性腫瘍(IPMN)の診断であった.膵体尾部切除を施行したところ,病理組織は嚢胞内に充満するように発育した胃型形質を示す分枝型IPMNで,悪性所見はみられなかった.術前の画像所見に一致する所見であったものの,典型的な分枝型IPMNとは異なる形態を示していた.今回,非典型的な画像所見を呈し,術前の鑑別診断に苦慮した胃型粘液形質を示す分枝型IPMNを経験したため,若干の文献的考察を加え報告する.