2020 年 35 巻 6 号 p. 607-614
症例は81歳女性で心窩部痛を主訴に発覚した膵頭部腫瘤である.造影CT検査上,中心部造影効果不良で辺縁が淡く造影される1.5cm大の膵頭部腫瘤を認めた.切除可能膵頭部癌の術前診断の下,亜全胃温存膵頭十二指腸切除を施行.病理所見では悪性所見なく,膵頭部黄色肉芽腫性炎症性腫瘤の診断であった.黄色肉芽腫は泡沫状組織球を主体とし,様々な炎症性細胞の浸潤,肉芽形成,線維組織増生を特徴とする炎症性病変である.胆嚢に発症するものが大半を占め,膵臓での報告は非常に稀である.本症例は膵頭部癌を第一に疑い切除を行ったが,膵頭部原発の黄色肉芽腫性炎症性腫瘤であった.既報をまとめると,年齢中央値は60歳,男:女=21:6,大きさ中央値2.9(1.5~14.5)cm,初発症状は腹痛が19例,術前診断は膵癌が13例と最も多かった.本疾患に典型的画像所見は確立されておらず,術前に膵癌との鑑別は非常に困難であるといえる.