膵臓
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特集 切除可能膵癌に対する標準治療:術前治療の意義
切除可能膵癌の標準治療における留意点
山峯 直樹渋谷 和人吉岡 伊作平野 勝久渡辺 徹星野 由維森 康介木村 七菜伊藤 綾香馬場 逸人三輪 武史北條 荘三松井 恒志奧村 知之藤井 努
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2021 年 36 巻 1 号 p. 57-63

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抄録

Prep-02/JSAP-05試験にて術前ゲムシタビン塩酸塩+S-1併用療法が有意に全生存期間を延長することが示された.この結果とJASPAC-01試験の結果を受けて切除可能膵癌は術前化学療法,過不足のない根治切除術,術後補助化学療法を行うことが標準治療となりつつある.そのためには正確な切除可能性の診断が前提となる.腹腔洗浄細胞診陽性の症例では術後全生存期間が有意に短縮することが明らかとなり,切除可能性診断に腹腔洗浄細胞診は必須となる可能性がある.審査腹腔鏡は,治療方針決定前に腹腔洗浄細胞診と画像検査で検出困難な腹膜転移,肝転移を検出する検査として有用である.かつて行われていた拡大リンパ節郭清,神経叢郭清は予後を改善しないのみならず術後補助化学療法の継続を困難にし得ることから行うべきではない.切除可能膵癌の診療においてはこれらのことに留意して標準治療を行うことで予後を改善することが望める.

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© 2021 日本膵臓学会
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