症例は37歳,女性.25歳で偶発的に膵体尾部に嚢胞性病変を指摘され,精査目的に当院消化器内科に紹介された.腹部造影CTとMRI検査では膵尾部に約5cmの嚢胞性腫瘤を認め膵粘液性嚢胞腫瘍(mucinous cystic neoplasm:MCN)が疑われたが,経過観察の方針となった.32歳時の第2子妊娠を契機に経過観察が一時中断となり,5年後の37歳に再診した.嚢胞性腫瘤は多房化し,大きさ6cmへの増大を認め,血清CA19-9の上昇を伴ったことから手術目的に消化器外科紹介となった.腹腔鏡下膵体尾部脾摘術を施行し,術後経過は良好で術後11日目に退院した.病理組織像では卵巣様間質を認め,微小浸潤を伴った膵粘液性嚢胞腺癌の診断であった.MCNの自然史を解明するには長期経過観察例の集積が必要である.