2021 年 36 巻 2 号 p. 158-162
症例は76歳,女性.17ヶ月前に膵癌(fStage IV)に対して膵頭十二指腸切除術を受け,nab-パクリタキセルとゲムシタビン,その後S-1による化学療法を施行された.術後12ヶ月目のCTで腹膜播種を認め,マイクロサテライト不安定性(MSI)検査でMSI-highであったため,ペムブロリズマブ(PEM)を開始した.PEMの開始から5ヶ月後に食欲不振が出現し,血液検査で高血糖とケトン体の上昇を認め,PEMによる急性発症1型糖尿病,および糖尿病性ケトアシドーシスと診断した.補液とインスリン投与で軽快し,第24病日に退院した.近年,免疫チェックポイント阻害薬の適応の拡大に伴い,その副作用である免疫関連有害事象が報告されている.抗PD-1抗体による1型糖尿病の頻度は稀ではあるが,致死的となることがあり,迅速な対応とともに定期的な血糖測定が必要である.