日本海水学会誌
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高速液体クロマトグラフィーによるアディポネクチン多量体の分離分析
長嶋 恭介南澤 宏明野伏 康仁中釜 達朗齊藤 和憲朝本 紘充
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2017 年 71 巻 6 号 p. 354-360

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抄録

高速液体クロマトグラフィー(HPLC)を用いたアディポネクチンの各多量体の分離分析における,サイズ排除クロマトグラフィー(SEC)用カラムおよび独自に製作したコラーゲンビーズ充填カラムの適用可能性について検討した.アディポネクチンとは脂肪細胞で特異的に分泌されるタンパク質であり,ヒトの血液中では複数種の多量体の形で存在している.これらは大きく低分子量体(LMW),中分子量体(MMW)および高分子量体(HMW)の3つに分類され,それぞれの状態で生物活性が異なる.これらアディポネクチン多量体の分析には酵素結合免疫吸着アッセイ(ELISA)法が汎用されている.ELISA法はLMW,MMWおよびHMWの3分画それぞれに含まれるアディポネクチン分子の総量を求めることができるが,原理上,各アディポネクチン多量体を個別に分離,分析することはできない.アディポネクチンがもつ生物活性のさらなる理解のためにも,単量体から各多量体までを個別的かつ網羅的に分離,検出できる方法が必要である.本研究では,SEC 用カラムのTSK-gel G4000SWおよびコラーゲンが担持されたビーズを充填した新規カラムの各アディポネクチン多量体の個別分析への適用可能性について検討した.アディポネクチンの標準試料を用いた検討より,最適化された分析条件のもとでSEC 用カラムでは30分以内にブロードな形状の4本のピークが,また,コラーゲンビーズ充填カラムでは60分以内に5本のピークが分離された.これらの結果は上記カラムが各アディポネクチン多量体の分離分析に適用可能であることを示唆している.

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