日本塩学会誌
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塩類溶液のクリーピングまたはスケーリングの抑制剤について
室谷 寛白崎 高保小平 博之
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1957 年 11 巻 1 号 p. 20-24

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抄録
結晶質は飽和溶液から析出するとき, しばしば器壁に附着する. こういう現象にクリーピングやスケーリングは属する. すなわち, 前者は器壁に這ひ上つた溶液からの析出である. あたかも結晶が溶液から這ひ出しているように見える. 後者は, いわゆるボイラースケールとして知られているところである. 本報では抑制剤を使用してクリーピングやスケーリングを防止することを研究した. 結果はつぎの通り.
(1) NH4Cl, KCl, KBr溶液はつぎの方法で, ガラス, ベークライト, グラフアイト板上でクリーピングする. すなわち, これらの塩の飽和溶液の一滴を水平板上におく, これを室温にて徐々に蒸発すると, 微結晶がもとの液滴の拡がりを越えて析出する. これはクリーピングであつて, その度合は拡がりの増加面積を以つて測る事ができる. 一方少量の (NaPO3)6 をその溶液中へ加えると, クリーピングは減る. また, その度合は析出した結晶の大きさに逆比例している,
(2) Ca(HCO3)2溶液は加熱によりビーカー壁に容易にスケールとなる. この溶液が少量の (NaPO3)6とMn2+を含んでいると, スケールは相当に減少する. 石膏溶液のスケーリングの場合は, クエン酸とMn2+とを加える事は最も適当である. これの場合においても, スケール量と結晶の大きさとは逆比例する, また (NaPO3) 6やクエン酸のいずれもMn2+と共同し効果的に働く. これらの添加剤が結晶の生成を促進させている事実から見れば, この促進剤のあるものはクリーピングまたスケーリングの抑制剤として使用することができる.
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